西洋近代文明の中で重視されてきた「実存主義」。この考え方はこれまで、さまざまな場所で分断や対立、利害相反を生んできました。対して、大乗仏教の核心とも言える「空」の思想。これは実存主義とはまったく異なるアプローチで世界を見、物事を捉えます。「死んだら終わり」の世界から脱し、「空」の思想を通して学ぶ「縁起」「因果応報」「輪廻転生」などを知れば、あなたが生きること、社会に関わること、その中で命をまっとうして死んでいくこと。すべての意味ががらりと変わります。仏教を学ぶときに決して欠かすことのできない「空」の思想。講座1回目ではまず「空」の思想をインストールして、世界の見方をガラリと変えていきましょう。

第1回で「空」の思想をインストールしたら、次に学ぶべき思想が「唯識」です。「空」なる世界の中で、私たちはどのように生きればいいのか。その大切な考え方が「唯識」にあります。「唯識」とは言い換えれば「心の哲学」。仏教哲学を通して私たちの心のありようを学んでいきましょう。仏教が考える人間の精神構造や認識力の構造、深層心理のあり方を知りながら、「他者とは何なのか」「絶対的な真理は存在するのか」「どのように心を育てればいいのか」などの問いに答えていきます。私たちの心は、これから世界を、どのように見ていけばいいのでしょうか。

多くの人が求める「豊かさ」。しかし私たちは本当の意味で「豊かさ」が何かを理解しているのでしょうか。資本主義の「豊かさ」を追求するあまり、あなたの心はおざなりになっていないでしょうか。数字で観測されるものや、金銭価値に置き換えられるものばかりが「豊かさ」ではありません。では、仏教が教える「豊かさ」とは何なのでしょうか。改めて、「豊かさ」の正体に迫り、私たちが勘違いしている「豊かさ」から脱却し、22世紀に人類が求めるべき「豊かさ」について語り合いましょう。

「空」の思想や「唯識」の思想を学び、世界の見方とモノの考え方をアップデートした上で、あなたはどのように「生きる」ことを望むでしょうか。人間と生きるということは、社会に生きるということ。その社会がどのようなものであれば、あなたは幸せな人生を送ることができるのでしょうか。『華厳経』や密教の「曼荼羅」などを参考に、「関わりの中に生きる」「個と全の関係に生きる」という仏教の概念を学べば、「ポスト」や「アンチ」といった分断が生じることのない、新しい生き方をあなた自身の手で選べるようになるはずです。

「空」の思想や「唯識」の思想を通して世界の見方を変え、「豊かさ」や「生き方」の捉え方も大きく変わったはずです。ここで学んだ仏教とは、まさに「心の科学」。この考え方を私たち一人ひとりがどのように実世界で生かし、実社会にインストールをしていけばよいのでしょうか。最終回となる5回目では、これまで学んだ内容を軸、受講生との対話をメインにしながら、日本と世界人類のアップデートの可能性について探っていきます。